「虫歯の予防」

 

これまで虫歯の発生因子について述べてきましたが、これらの因子を除くことが虫歯の予防になります。虫歯の発生予防としては、歯が生える以前の歯の形成時の資質の強化と歯が生えた後の資質表面の予防処置に分けられます。前者は、乳歯や永久歯を含めて、健全な歯の形成と歯の抵抗性を高めるものです。それには、上水道のフッ素化、各種栄養素の食物への添加、薬物投与などの方法がありますが、特に母胎内で形成される乳歯に対して、妊婦は強い歯を作るのに注意する必要があります。後者は後天的予防といえるもので、生えた歯をいかに虫歯にしないようにするかということです。これには、口腔衛生教育や歯の清掃法、歯面に薬物を塗布する方法、また虫歯にかかりやすい歯の溝を填塞する方法などがあります。その他、定期的な歯科検診による虫歯の早期発見、早期治療は、虫歯を抑制するのに効果的な方法です。

 

  1. 虫歯の予防時期

人生には、虫歯の急増期が2回あると言われています。それは4~6歳ごろと14~16歳ごろで、前者は乳歯群の虫歯、後者は永久歯群の虫歯です。これらの時期は心身が最も成長するときで、食欲旺盛な年齢期です。ですから、この時期の1~2年前から虫歯予防に心掛けておかないと、この時期をうまく通過させることが難しいわけです。

また、乳歯の虫歯の発生状態から考え、1歳から2歳になる時点で約26%の増加、2歳から3歳になる時点で約33%の増加になり、全体で二歳児では34.0%、三歳児では66.7%の虫歯の発生率です。そのため、乳歯の虫歯予防は一歳児から始めなければなりません。特に1歳6ヶ月児検診を境に、虫歯予防を実践することが望ましいのです。また、最近は第一大臼歯の虫歯の発生率が高いため、第一大臼歯が生える6歳ごろから十分に口腔衛生管理を心掛ける必要があります。

 

  1. 虫歯の予防方法
  • 歯口清掃

虫歯の予防方法のうち、口の中の清掃はもっとも効果的な方法の一つです。もちろん、一般家庭ですることが出来、毎日行うことが出来ます。

歯口清掃とは、口の中の細菌や歯垢、歯石を取り除き、食べかすなどが腐敗、発酵して虫歯や歯肉炎を引き起こさないように、口の中をきれいに清潔に保つための手段です。これにはブラッシング法と洗口法があります。

■ブラッシング法

自浄作用が及ばない部分を、歯ブラシなどを使って機械的に歯を清掃することです。この時、歯磨き剤をつけて磨く場合もありますが、機械的効果を目的としているため水だけでも結構です。歯の清掃状態の良否は、清掃方法と同時に歯ブラシの形態や大きさにも左右されます。歯ブラシは、だいたい下の前歯の四本程度の大きさが一般的ですが、それよりも小さめの方が良いと思います。また、毛束が広がってしまったものは清掃効果が悪いので、取り換える必要があります。

<刷掃(ブラッシング)>

乳歯列期の刷掃は横磨き法を基準として、一歯面ごとに磨きます。ブラシに少し力を入れて十回程度小刻みに歯面に平行に振動させるようにして磨き、歯垢を除去します。特に歯と歯肉(歯茎)の境界、咬合面、隣接面に重点を置いて、少し力を入れて磨くようにすると良いでしょう。

ブラッシングの際に歯磨き剤を使用すると発泡して、子供が吐き気を催したりすることがありますので、歯磨き剤を使用しない場合が多いのです。

<綿掃(フロッシング)>

これはデンタルフロス(塗蝋絹糸、絹糸および塗蝋ナイロン糸、ナイロン糸)を用いて、隣接面を清掃するものです。これをフロッシングといっています。これには、デンタルフロスを両手の指に絡ませて行う方法と、器具(フロスホルダー)を使用する方法があります。

(虫歯の予防 図1)

まず隣接面から歯肉の奥までフロスを挿入します。著しく隣接面がきつい場合は、フロスを前後に動かして少しずつ挿入していきます。そして歯に接触させフロスを張った状態で引き上げ、それから引き下げて、さらにもう一度引き上げる動作を行います。フロッシングもブラッシングと同様に、子供が一人で行えるようになるまで親が行います。そのときはフロスホルダーを利用すると便利です。フロッシングは一日一回を原則としていますが、低年齢児は1週間に1~2回程度で良いでしょう。

<洗口法>

洗口液を口に含んで、頬筋、口唇などを強く動かし、洗口液を口の中で激しく流動させて吐き出します。これは、洗口剤の作用によって歯や口の中に残った食べかすを取り除くもので、虫歯や歯肉の疾患の予防や抑制になります。

洗口剤には、フッ素化合物、殺菌剤、抗菌剤、抗酵素剤などの溶液があります。

 

  • 間食――当分の制限

間食(おやつ)は、発育旺盛な子供では補助食の意味から必要とされるものです。しかし、間食の多くは菓子類が多いため、これに含まれている糖質が酸を産生しやすく、虫歯を発生させることになります。また菓子類の間食を何回もとると、歯の表面を溶かす酸を発生する機会が多くなり、虫歯になりやすい環境を作っていることになります。

<間食の与え方――間食を与えるときの注意>

虫歯を作らないように間食を与えなければなりません。その注意事項に次のことが挙げられます。

  1. 砂糖の少ないものを選ぶ。
  2. 粘着性の強い食べ物は避ける。
  3. 間食と同時にお茶、牛乳、水などの飲み物を与え、間食が口の中に長時間停滞しないようにする。
  4. 間食を与えた後には、必ず口の中の清掃を行う。
  5. 定まった時間に与え、就寝前や食事前に与えないようにする。
  • 薬物応用

歯質を強化するためにフッ素化合物を投与し、虫歯の予防に効果を上げています。これには、内服法と外用法があります。現在ではほとんど外用法、すなわち歯にフッ素を塗布する方法が多く用いられています。

フッ素の塗布は、生えた直後の虫歯のない健全な歯において予防効果が大きいものです。フッ素を塗布する際に歯面が清掃されていないと、その効果は半減します。

この他に、フッ素入り歯磨き剤、フッ素入り洗口剤などが市販されています。またフッ素と硝酸銀を混ぜたフッ化ジアンミン銀溶液がありますが、これは初期の虫歯に塗布して、その進行を抑制するのに多く用いられています。これを塗布すると、虫歯の部分が黒変するのが欠点です。

  • 窩溝填塞法

歯の咬合面は複雑な形になっているため清掃が十分にできず、虫歯になってしまうケースが多いものです。このため、そのような複雑な窩や溝を修正し歯の清掃を容易にする方法で、それらを接着性のプラスチックで填塞して咬合面を修正し、食べかすが入らないように防ぎ、清掃を容易にしようとするものです。この方法を窩溝填塞法と言いますが、臨床的に効果を上げています。特に永久歯の第一大臼歯の虫歯予防に効果的です。

その他に、定期的な歯科検診を受け、常に口の中を管理することに心掛けることが大切です。